book-introduction blog

私が読んだ本の感想、紹介をするブログです。

江戸川乱歩「人間椅子」 感想(ネタバレあり)

皆さんこんにちは、sugar247です。

今回は江戸川乱歩の有名な作品の「人間椅子」について感想、紹介していけたらと思います!!

※この先ネタバレを含みます。苦手な方はお控えください。

 

目次

 

人間椅子」とは

人間椅子とは江戸川乱歩の短編作品で、1925年に大衆文芸雑誌「苦楽」にて発表された作品です。調べてみましたがこれ以外の情報は出てきませんでした。

 

あらすじ

閨秀作家(今で言う女流作家)の「佳子」は夫の登庁を見送ると書斎にこもり執筆活動をしていました。そんな彼女のもとに一つの原稿が届きます。
普段から原稿が送られてくることはよくあり、決まって退屈でありました。
本文引用:

(前略)そうして突然原稿を送ってくる例は、これまでにもよくあることだった。それは、多くの場合長々しく退屈きわまるしろものであったけれど・・・(後略)

 佳子はそれを読むために封を切りました。しかしそれは普段とは違うものでした。表題や署名もないまま「奥様」から始まっていた。
原稿に書かれていたのは家具職人の男の奇妙で不思議な趣味でした。


この男は醜い容姿をしていました。
しかし、家具を作る技術はとても優れていたため仕事には困りませんでした。
彼は自分が椅子を作るたびにその椅子に腰かけ目を閉じて妄想の世界に入り込みます
本文引用:

(前略)床には高価なジュウタンが敷きつめてあるだろう。そして、その椅子の前のテーブルには、目のさねるような西洋草花が、甘美なかおりを放って、咲き乱れていることであろう。そんな妄想にふけっていますと、なんだかこう、自分がその立派な部屋の主にでもなったような気がして、ほんの一瞬だけではありますけど、なんとも形容のできない、愉快な気持ちになるのでございます。(後略)

 そんなある日、彼のもとに少し特別な仕事が舞い込んできました。
外人が経営するホテルに使う椅子を作ることになりました。
そんな時に彼はふと思いついてしまうのです。
椅子の中に入ってしまおう・・・と
男は椅子を解体して細工をします。
椅子というのも大型のアームチェアのためうまく工夫すれば人が入るなど容易なつくりでした。
というわけで男は細工をして中に入っても2、3日は大丈夫なように作り直しました。

そして彼は椅子の中に入り込みます。しばらくするとその椅子を引き取りに業者が来ました。彼が作ったほかの椅子が運び出されいよいよ彼が入っている椅子が運び出されます。

ホテルに着くとラウンジに置かれました。彼がなぜこのようなことをしたのかというと、盗みを働くためでした。そのため、最初のころは夜の誰もいない時間に椅子から抜け出し、盗みを働いていました。

 

そんな生活を続けていましたが日中はずっと椅子の中に彼はいます。外から見ればただの椅子なのでホテルの客は何も気にせず座ります。次第に男は椅子の中から感じる体温や体の形などを感じることに魅入られていきます。

そんなある日、ホテルが日本の企業に売られ、備品のいくつかが競売にかけられました。彼の入った椅子も競売にかけられました。結果彼の入った椅子はある官吏の家の書斎に置かれることになりました。そして彼はそこの夫人に恋をします。そしてその婦人というのが・・・

 

彼女は途中で読むのが恐ろしくなり読むのをやめてしまいました。しかし、どうにも中身が気になり結局最後まで読んでしまいました。

そうすると女中の一人が手紙を持ってきました。佳子は開けようとしますが宛書きを見ると先ほどの原稿と同じ筆跡で書かれていました。彼女は手紙を落とすほど驚きましたが、封を切り、中身を読んでみました。そこには驚きの言葉が・・・

 

続きはぜひ実際によんで確認してください!!

感想

まず、私がこの本と出合ったきっかけはyoutubeに載っていたボイスロイド朗読動画でした。そこで人間椅子を聞いていて実際に読んでみたいと思うようになりました。そこで図書館に行き、人間椅子の載っている短編集を借りました。ここで初めて、しっかりと人間椅子を読みました。

 

私がこの作品の好きなところを紹介していきます。

 

1.主人公が二人いる。

 この作品には主人公と呼べる人が二人います。

まずは「佳子」官吏の夫を持つ売れっ子の美しい閨秀作家。

そして「わたし(家具職人)」佳子に奇妙な原稿を送ってきた謎の男。

この作品、最初は「佳子」にスポットライトが当てられて物語が進みます。

本文引用:

佳子は、毎朝、夫の登庁を見送ってしまうと、それはいつも十時を過ぎるのだが、やっと自分のからだになって、洋館のほうの、夫と共用の書斎へととじこもるのが例になっていた。(後略)

 このように佳子の日常から始まります。しかし、原稿を「佳子」が読み始めたと読み取れる場所から主人公は「わたし」に代わります。

原稿の内容については次で触れますが「わたし」が主人公で物語が進みます。

本文引用:

(前略)奥様のほうでは、少しもご存じのない男から、突然、このようなぶしつけなお手紙を差し上げます罪を、幾重にもお許しくださいませ。(後略)

 そして原稿が終わるとまた「佳子」に戻ります。

私個人がこういった主人公が変わるような物語が好きなのもあり、とてもグッときました(笑)また、「わたし」の時と「佳子」の時では文そのものの雰囲気が違うように感じたため、読んでいてわかりやすく、読んでいて非常に楽しかったです。

 

2.変態行為?いいえ、フェティシズムです。

「わたし」の原稿のくわしい内容は実際に本文を読むか、あらすじで想像してください(笑)

かいつまんで説明すると、「椅子の中から感じる人のぬくもりとか最高・・・」ってことです(笑)

もちろん実際には違うのでしょうし私も歪曲していると思いますが、とても短く説明するとこれになってしまいます。

しかし、上記のとおりであれば当然読んでいて不快に感じたり、少しセンシティブになってしまいますが、この作品は読んでいてそういった不快感などが私はほぼ感じられませんでした。むしろその行為が一種の崇高な行為にすら私は感じました。こういったところが私は乱歩のすごいところなのかなと感じました。とても奇妙で不可思議な文であるのは間違いありませんが読みづらさはなく、すんなり入ってきます。こういったところも読んでいて理解しやすかったです。

 

3.最後の大どんでん返し

この作品、というより乱歩の作品にも共通しているのかもしれませんが最後の最後で完璧にオチが来る。これは読んでいてとても楽しいです。どんな内容かはここでは明言しませんが少しクスッとなるような・・・でも、納得?のような感情のような・・・と、なんと形容したらいいのかわからないところもとても面白いところでした。

 

 まとめ

というわけで「人間椅子」について書いてきました。いかがでしたでしょうか?

一つの原稿から始まる不思議な物語。ここに書いたのは一部でありますし、あくまで私の言葉になります。ですので実際に読んでいただくのが一番おすすめです。「人間椅子」なら図書館で借りれると思いますので是非読んでみてください!!

その時にフッとこの記事を思い出して自分の感想と比べてみてください。